滑り止めへのチャレンジ

2008年8月29日 (金)

滑り止めの世界が変わる?

                  滑り止めの世界が変わる?

 翌日嬉しさを堪えながら、依頼者であるタイルメーカーの社長を尋ねました。社長室で改めて400ミリ角のセラミックストーンに出来たての滑り止め溶剤を塗布し、その評価を確認する為です。社長は、信じられない顔つきで私の作業を見つめていました。数分後、滑り止めを施したデモタイルを手に取り、真剣に何度もタイルを回転させながら光沢、反射を確認する社長の顔が笑顔に変わっていきます。デモタイルに水滴を落とし足を滑らせてはオーッ、オーッと歓声を上げ、滑らん、本当に滑らん、と繰り返し、そりゃもーメチャクチャに喜んでくれました。さて、これからが問題です。大きな壁が待ち受けています。ASTMでの摩擦係数40をクリアせねばなりません。滑り測定値については、テーマが大きすぎる為、後日、別途記ししたいと思ってはいます。しかしながら、何等かの目安が欲しい為にある計測器の係数値を安易に安全基準値とし採用しているタイルメーカー、並びに鉄道関係等と増加しているのは残念な事です。安易な考えで採用すると必ずトラブルに発展します。さて、今回はASTMです。とりあえず社長室で3枚のデモタイルを仕上げ、測定のためタイル協会へ送ってもらう事にしました。その時の社長の一言。もし、これがASTMで40以上をクリアしたら弊社の販売戦略は大きく転換する。将来、Pタイルにこのセラミックが取って代わる時代が来るかもしれない。セーフティさん、弊社のカタログに、この滑り止め工法を掲載しますよ。大変に有難い申し出を受け、この時は、若干の不安は正直ありましたが、久しぶりの充実感に浸りました。それから約2週間が経った頃、タイル協会から待ちに待った連絡がきました。3枚送ったセラミックストーンの其々の計測値は、39、41、42。確信はありましたが嬉しい結果となりました。暫くして、タイル協会の所長から電話があり、〃驚きました。何ですかあれ?ASTMの測定値より、はるかに摩擦感があるんですが、どんな理論なんですか?〃・・・私は返事に困り、こう答えました。私もまだ解りません。これから理論付けします。・・・・・・・・9年経って2008年。今まさにPタイルがセラミックストーンに移行しつつあります。・・・・・・・・・・・・次回へ                              

2008年8月28日 (木)

一万分の一ミリの目線 その3

                滑り止めおたく・・・・・に徹して

 ヒントを得て早速、開発戦闘開始です。とりあえず手許にある無機、有機の酸性の薬品だけでは材料不足なので8種類の薬品を補填購入しました。次に重要なのが各床材の耐薬品性となります。石材店、タイル業者に出向いては構想の範疇にある床材を片っ端に買い集めました。事務所の中は、いつもにも増して床材だらけの状態となり異様な空間を呈しています。セラミックストーン専用滑り止め溶剤を開発するのに、何故にこれだけ多種の床材が必要なのか?現在、滑り止め業に携わっている皆さんは不思議に思われるかもしれません。その理由は、前回、簡単に記述しましたが、床材をスタッドレスにする為には床材の結合粒子の一部、石英(以降シリカとします)を溶解させる必要があります。酸性成分によりパワーを得たフッ化物がその役割を担う訳ですが、実はここに最も大きな問題があります。床材の成分には、石灰をはじめ酸性成分に過剰に反応する物質も多く含まれているからなんです。床材をたくさん集めた理由はここにあります。タイルや自然石が、それぞれの無機系酸、有機系酸の反応性の強弱によってどう変化して行くのか、また、そこにフッ化物を混入した時に、それぞれの床材がどう変化して行くのか、見極める必要がありました。9年前ですから、その当時の私の会社は、私と私を補佐してくれる1名の社員しか居りませんでしたので、そりゃもう大変でした。(今も大変ですけど・・・・crying)日中は食っていく為、滑り止めを施したデモ用タイルと石材の入った重たいカバンをぶら下げて営業で走り回り、何処に伺っても〃何ですかソレ〃と言われ、1日何回も同じ事を説明し、クタクタの毎日でした。従って研究開発は基本的に夜です。毎回テスト的に創る溶剤は1000ミリリットルとし、層別した床材に塗布し、反応性と効果、床材の変化のチェックを繰り返しました。毎晩、この繰り返し。今風に言うおたくになりきりました。覚悟を決めると出来るもんです。その間に不適合で溜まったテスト溶剤は、以前に滑り止め施工でお世話になった某ホテルから浴場の滑り止め保全の為に有難く使用させていただきます、と喜んで引き取って貰い、テスト済の不要な床材は、産廃とし代理店である石材会社に引き取って貰いながら数ヶ月間没頭しました。この作業は言うならば、リニアモータカーをより浮かす為に必要不可欠である超伝導体を日々研究している皆さんと同じことをやったんだ?と自負していますが、能力もスケールも違う世界ですね。失礼しました。実は、ある発見を機に私のイメージしたレベルの溶剤が出来上がりました。とりあえず、出来上がった溶剤をセラミックストーンに塗布し、滑り止めの効果を確認。今までの滑りの止まり方と全く違うピタッと止まる感覚、それでも光り輝くセラミックストーンに見とれながらホッと一息入れました。・・・・・・・・次回へ

2008年8月22日 (金)

一万分の一ミリの目線 その2

            バクテリアより小さくなって見ると???

 男ばっかりの5人兄弟の4番目に生まれ、元来やんちゃ坊主である私の発想は、よく子供じみていると言われます。少年に返りバクテリアより小さくなって?私は光り輝くセラミックストーンの上にテレポートし飛び降りてみました。着地してみると、そこは予想とはかけ離れた薄暗い洞窟なんです。周辺を見回すと鈍く光っている箇所がたくさんあります。石英です。セラミックストーンの原材料となる石(花崗岩)の主な成分(75%強)が実はこの石英なんですね。滑り止めの溶剤はこの石英に、どう反応させるかがポイントなんです。暫くすると天井から光が差し込んできました。どうやら結合粒子のすき間に着地したみたいです。まずは上に昇ってタイルの表面状態を見たいと思います。やっとのおもいで頂上にたどり着き立ち上がって見ると、目映いばかりの光景が広がりました。頂上の辺り一面光り輝いています。周辺を見渡すと以外や以外、そこには僅かに凸凹のある台地が広がっています。鏡面仕上げのタイルなので当然のごとく全面フラットになっていると思い込んでいました。ついでに上空を飛んでみることにしましょう。タイルの上空を何回か旋回していると、其々の台地の光沢の違いに気が付きました。下に降りて何がどう違うのか探索することにします。石英はさすがに1番光っていますが、アルミナをはじめ石灰やその他の物質も遜色なく光っていました。結晶構造をもつ物質のみが光沢を放つと考えていた私には新たな発見です。要は、緻密な結合状態の物質は磨くと光ると言う事です。何やらヒントを得たのでドロンと元に戻ります。さて、ここから核心に入っていきますが、結晶構造をもつ石英がタイルにどのように分布、配置されているかを想像する事から始めました。石を微粉末にした際にバインバーとして何かを投入したと仮定しても元々75%強を占めている成分ですから当然タイル表面にも同様に分布している筈です。通常の滑り止め溶剤ではタイル表面の石英に過剰反応して光沢はぶっ飛んでしまいます。滑り止めとはどんなものか?何故滑りが止まるのか?滑り止め溶剤の成分がどんなものか?知らない人は何のことやら判断しにくいと思いますから、ここら辺でチョイと説明しておきましょう簡単に言うと、滑るタイルをスタッドレスタイルに変換してしまうんです。基本的な理論は殆んど同じです。従って、タイルにすき間を形成する必要があります。滑り止め溶剤で石英を溶かしてそのすき間を造ります。石英を溶かす成分はフッ化物で、そのフッ化物は酸性系統の液体に反応しその役割を果たします。従って、石英を溶かす中性の滑り止め溶剤というものは存在しません。今、世間で中性の滑り止め溶剤でうんぬんと銘打って事業展開している連中もいますけどね。本当にとんでもない事です。中性と言う定義は、学術的にはPH7であり、家庭用品表示法においてはPH6~PH8となります。参考のため。・・・・・・・・・・・・次回へ

2008年8月12日 (火)

一万分の一ミリの目線

                   一万分の一ミリの目線

 何十回と失敗を重ねては〃にらめっこ〃の繰り返しが続きました。開発開始から3ヶ月を過ぎた頃の8月のある朝、事務所のテーブルに放置していた失敗した筈のセラミックストーンが僅かに光っていました。その日は、晴天で事務所の窓から強い光線が差し込んでいました。たまたまその日は、事務所で朝を迎えるハメと相成りまして、7時過ぎの横殴りの強い光線を垣間見る事が出来たんです。前日、全く光沢の無かったタイルが光って見える不思議な光景にしばらく見入っていました。日が昇るに連れタイルの光沢は無くなっていきました。何で光っとったんやろか?確かに反射しっとたな?・・・・・。その時、私の中で僅かな閃きが生まれつつありました。1時間くらい反射しとったな・・・24時間光らせることができんかなあ・・・。冴えない頭でうんぬんと呟いては打ち消し、タイルを外に持ち出しては、太陽に向かい、あれこれ何回も透かして見ては光る角度を検証したり、道行く人は、あいつ何しとんねん・・・・そう思ったでしょうね。確かに一部光って見える角度がありました。残念ながら事務所のへぼい蛍光灯では光りません。困りました。依頼されたテーマは、蛍光灯の下でも光り輝き、そして滑りを止めることですからね。その日、私はホームセンターへ出向き光沢剤を買ってきました。狙いはもちろんタイルに光沢をつける為です。塗っては乾かしの作業を数回繰り返してはその都度透かして見ましたが、一向に光りません。ところが、蛍光灯に透かして見ると、それなりに光って見える角度がありました。タイルを真正面から見ると光沢はありません。同じ作業を繰り返しているうちに・・・・閃きました。錯覚の世界を創造する事を。何にも考えず、何回もタイルを蛍光灯に傾け、透かして見ていて気が付きました。角度を変えると光ると言う事は、タイルのどこかに反射する部分が残っていることを意味しますよね。それがタイルの何処なのか、どんな成分なのか、・・・・大きなヒントが実はパンフレットにありました。セラミックストーンのパンフレットに石を微粉末にして2800トンでプレスしうんぬんと記載されています。実はガラスもタイルも結合粒子である事に気が付いたんです。ガラスみたいにピカピカ光っているタイルの表面をいつも目線で見ていたから気が付かなかったんですね。今思えば、吸水性0.01のタイルです。当然かもね。そこで私は、一万分の一ミリに変身しセラミックストーンの上に立ってみようと考えました。エンヤコラドロン・・・・・そこで見える光景は・・・・・・・次回へ